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あゝ、何だ此れは――。そして此処は何処なのだろうか――。
頭が痛い。耳の奥で高い音がする。
とても暗く――、そして、白い――?
真っ昏い中で貼りついたような白い何かが見えた。

視界は昏く、隅の方に張り付いた小さく白い影の他には何も見えず、辺りからは何か声が聞こえる――。人間の声のようだが、先程から耳鳴りがひどくて聞き取れない。
聞いたそばから音がどこかに漏れ出していくような不快な感覚がある。流れ出してゆく音は僕の周りの水に混じって――、あれ、なぜ僕の周りに水があるのだろう。

たゆたう中で、聞こえる音が流れ出すのと同時に何かが僕の中に入ってきて、不快な音を立てて僕に混じっていく。どんどんと僕の中から流れ出し、それと引き換えに入ってくる――。耳鳴り。怖い。頭痛。厭だ。

僕が他のモノに置き換わっていく――。

あゝ――声が聞こえる。何かを懇願するような声――高笑い――すすり泣く音――、はて、どこかで聞いた事のあるあの声は――。

あゝ、いつのまにか視界の半分ほどにまで白い何かが膨れ上がって――、あの白い塊は生きているのか――?白い塊は生き物のように膨らみながら僕に近づいてくる。あゝ声が大きくなって歪んでゆく――、白い何かがまとわり付く――、外と中から僕は何かに食われている――。頭が痛くて仕方がない。あゝ厭だ厭だ厭だ――白い化け物にはなりたくない―、沈んでゆく――。
sage
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